※このお話ではエドには彼女、ロイには婚約者がいます。
 直接的な性描写はありませんが、チラっとエドと彼女の事後的な言葉が出てきます。
 そして死ネタです。
 上記の設定が苦手の方は自己判断で進むか戻るかしてください。


















私の彼氏はいつもどこか遠いところを見てる人だったの。

















彼女と彼氏の結末

















「ねぇ、悔しくないの?」


隣にいる少し表情が固くなった彼に尋ねてみた。



「え?」

「あれ、エドの上司さん。あんなに綺麗な人をつれて歩いてるじゃない。

もしかしてあの女の人、彼の婚約者とか?」



私たちの目先には、美男美女という言葉が正しく当てはまるような一組の

カップルがショーウィンドウを二人で仲良く覗いていた。


風の噂で軍の出世頭と名高いマスタング中将がやっと結婚を決めたと耳にしたことがある。

それをふと思い出してなんとなく彼に尋ねてみたら案の定、彼は眉を寄せてしまった。

そんなことを聞いた自分も悪いが、彼にそんな正直な顔をされるとさすがにこちらも傷つく。

そっと、無意識に自分の心臓あたりに添えた手をきゅっ、と握り締めた。



「あぁ、そうだよ。っつか何、悔しいって。あいつが綺麗な女の人を婚約者にして悔しくないのかって?………意味わかんねぇ。俺にはお前がいるんだからなんとも思わねぇよ。」

「あら、それはありがとう。でもね、エドは嘘ばっかり。あたしはあの人を忘れるための手段でしょう?まったく、女はね、男が思っているより鋭いのよ、舐めてもらうと困るわ。 」



前々から気付いていたことをこの際、いい機会だと思って言ってみる。

すると彼は目をまん丸くして


……驚いた。っつか、その前に普通に考えて気持ち悪いとか思わないわけ?」

「別に。好きもんはしょうがないじゃない?」



そうあっけらかんと言う私に彼はさらに金色の目を真ん丸く見開き、

そして申し訳なさそうに、

苦しそうにごめん。とただ一言謝った。












************





それからも私たちは今までどうりの゛恋人どうし゛という関係で、

むしろこの一件から彼は私に嘘偽りなく、ありのままを見せてくれるよう

になって私は正直嬉しかった。

別に愛されてなくても、結局私は彼をほうっておけないのだ。



……………あぁ、いわゆる似た者同士 なのね。私たち。



いつも近くにいる思い人。離れたい。でも離れたくない。

彼の役に立ちたい。苦しい。痛い。

でもその人を忘れられない。思わずにはいられない。


そうして様々な感情にもがき苦しむ彼が、どこか儚い印象をもつ彼が少し

でも私の体で安らげればと思う。


そんな傷の舐めあいのような関係が続いていたある日、セックスの後で彼はポツリと



「俺、明日から戦争に行ってくるわ。」


と、まるで近所に買い物に行くような口調で告げた。


「は?ちょ、待って。戦争?なんでそんな急に…………っ?!」

「ほんと、最初から最後までごめんな。」



この馬鹿は私を寂しさを紛らわせるためにずっと利用して最後は捨てる

ように去ることに対して謝ったらしい 。



「………!っ、バカじゃないの。バカ、バカだよ!エドは!私に謝ったってね、結局それは…………戦争に行くことはあの上司のためなんじゃないっ!」


「……ははっ……本当にお前は俺の良き理解者だよ。」



苦笑しつつも否定しないこの男が憎い。

でもそれ以上に、それ以上に男のまっすぐなところが愛しい。そして、悲しい。

このバカは、上司の出世の役に立てばと思って戦争に向かうのだろう。

そんなこと私にはお見通しだ。


顔をぐちゃぐちゃにしながら涙を流し続ける私に慌てて彼は優しく頭を

撫でてて慰めてくれる。

それは私の大好きな彼の仕草でさらに涙が溢れてくる。

本当、馬鹿だなぁエド、逆効果だよ。なんだか泣きながら笑ってしまいそうだ。




どうして報われないのだろう、こんなにも彼は思っているのに。




それから私が落ち着くまで彼は頭を撫で続けてくれて、結局泣き疲れ、

そのままこの男に腕に子供のように抱かれてその日は眠りについた。

いつもと立場が逆で、彼に包まれて嬉しかった。

同時に彼にもこの幸せを与えたかった。

………でもそれができるのはこの世でただ一人。あの上司だけなのだ。






翌日、玄関で彼と別れの挨拶をする。 昨日の頼りなさげで私をあやして

くれた彼とは正反対の凛々しい軍服姿で目の前に立つ彼は、どこか儚くて怖い。



「……帰ってきてね」

「え?」

「エドが求める人にはなれないけど、あたし待ってる。ずっとエドのことを思い ながら待ってるから!」



思うだけなら自由だもの。 そう言って勝手に待つと決めた私を見て、

エドは少し驚いた表情をみせたが、その後にとても素敵な笑顔で



「……ありがとう。俺を思ってくれる奴がいるだけで幸せだよ、俺は。」



そう言ってぎゅっと私を抱き締めてくれた。



「あいつとはまた違う思いになるけど、俺、お前のことちゃんと愛してるよ。」



必ず、帰ってくる。 そう約束してくれたエド。 でもね、でもねエド。

私、心のどこかで気付いてたよ。 

気付いていたけど、私は彼の言葉に頷いた。









彼はきっと………………。














************




半年ほどたったある日、私は彼の匂いが消えてしまったベットで丸まるように眠ていた。

その時、 ふと誰かが自分の頭を優しく、優しく撫でてくれることに

気付いた私は重いまぶたを少しだけ開けた。

ぼやける視界で誰が撫でてくれているのかわからない。でも金色が目の前

に輝いているのだけは鮮明にわかった。

そしてあのよく知っている彼のあのオイルの匂いがして私はベットから飛び起きた。








目の前には、     闇。







呆然とする私。



「……………え ど?」





思わず彼の名前を呼んでみたけれど、結局彼は見当たらなくて、

それから少し泣いた私は再び眠りについた。せめて夢の中では大好きな彼

に会えるように、と。



そんな次の日、私は本物の彼会うことができた。 




小さな箱に詰められて、彼の匂いを消すくらいの花の香りにつつまれて彼はそこにいた。


扉を開けるとむせ返るような花の香りの中、眠る彼の側には彼の想い人が

立っていて、 なぜかとてもいとおしそうに彼の頬を撫でていた。





何がが私の中で切れる。





「……触らないで。」



すでに涙声になっている私に気付いたその人は振り向いて私をみた。







何よ、その顔は。





…………どうしてあなたがそんな顔をしてるの?大事な部下を失って傷ついているの?
……それとも…………。



そこで気づく。

まさか、まさか、この上司も……



ひとつの可能性が浮かぶ。

だが、しかし・・・・・・・何をいまさらっっ!!



「やめて、エドワードに触らないで。……エドワードを悲しめるだけ悲しめて逝かせた、あなたはっっ!」


頭がぐちゃぐちゃする。涙が止まらない。わからない。


「エドワードはあなたが好きだった。あなたのために戦争に向かった。

……そし て、18歳の若さで死んだ!どうして!エドだけ!なんで!」



床に手をつき泣き崩れる私をただ上司は呆然と見つめるばかり。






儚い笑顔のあなたが脳裏に浮かぶ。 エドワード、ひどいよ。

あなたは約束を守って私のもとに帰ってくれた。

とて も優しく、最後の最後で私に触れて。

















ねぇ、エド。

涙が止まらないの。心が苦しいの。


お願い、あの時みたいに優しく私の頭を撫でて、  慰めて?





























彼氏と上司の結末、その始まり