子猫の来訪。





ふらりとやってきては我が物顔で居座り、勝手気ままにくつろぐ彼はまさしく  猫。



そう、いつものことながら猫のような気まぐれさで彼は突然やってきた。




時刻は午後3時を5分ほど過ぎたところ。終業まではあと数時間。


部下達が隣の部屋でいそいそと休憩をとろうとしているらしく、ざわめきが耳に入ってくる。

しかし、私は本日ご婦人とのデート。遅れてはならぬと部下の誘惑を断り、今日ばかりは真面

目にせっせと仕事 を片付けていたその時、 突然(それはもうノックもなしに)私からみて前方に

位置する執務室の扉が開く。


まぁ近づく気配に気付いていたため別段驚くことはなかったが、彼の突然の来訪 に眉をひそめてながらも出迎えた。



「……鋼の。毎回言っていることだがね、ここに来る際は事前連絡をしてもらわないとこちらも

予定というものがあってね、困るのだよ。」



ため息とともに子供に対して一応は(改善されたためしがない)注意を施す。 が、こちらの事情

など何ひとつ気にしない彼は目をしょぼしょぼさせながら



「…………眠い。」



ただ一言そう洩らしてふらふらと私の机前に位置する皮張りのソファーに近づいてくる。


またわけのわからない子供の行動に呆気にとられている私を無視して子供はついに ごろん、

とソファーに寝そべったところで私は慌てる。



「……っ、おい鋼の!そんなコートを着たままで寝るな!皺になってしまうぞっ。 」



ぬぎなさい、と施す私に



「………んー、めんどくせー。」



と私の心優しい、気遣いをなんとまぁ単純な理由で嫌がる子供。


うとうととすでに目が閉じたり開いたり忙しないその様子にため息がでる。



「まったく。ほら、とりあえずコートを脱いで。それからこんなソファーで寝たら風邪をひくだろう。」



相手の健康にまで気を使うこれまた本当に優しい上司に子供は感謝するどころか、


んー、とか 

うー、 とか

あー、   とか


うだうだする子供に仕方なく私は椅子から立ち上がって近づき、彼の横にひざまずく。



「はいはい、鋼のー、ばんざーいしろ。ばんざーい。」



小さな子供に言うように身振り手振りをつけながらそう言うと、ダルそうにも手を挙げてくれる

子供が可愛らしくて口を緩ませつつ、 素早く赤いコートを腕から脱がす。



「いいこだねー鋼の。さぁ次は仮眠室に移動だ。こんな硬いソファーよりもふか ふかで気持ち

いいぞー」



そんなささやきに子供はピクリと反応を示すものの、それでも一向に彼は動きださず仕舞には、





「………だっこ。」





…………こ い つ。





きっと私はこの子供が鋼のでなければ確実にキレていただろう。 だが、小さい体をさらに小さく

丸め、真ん丸く大きな金色の瞳を眠気でとろんと 潤ませながら(舐めたら甘そうだ)上目遣いで

そんなことを言われたら誰が拒否することができるのか。



「……わかった、仕方ない、今日は可愛いい鋼のに免じてだっこでベッドまで運んであげようじゃないか。」


「きもいぞー無能。」



さらっとムカつくことを言われたが、ここは大人として流してやる。

そして言葉は悪い反面、従順に私に手を伸ばして体を預ける子供。


くそぅ。可愛いなぁ。

そんな変態じみた考えを顔には出さず手慣れた様子で鋼のを前にだっこする。 自慢ではない

が、鋼のをだっこするなんて朝飯前なのだ。



するとコートを脱がされ少し肌寒さを感じていた子供は、近くにある体温に擦り寄る。

ぴったりと私の首から肩にかけて頭を置いたため、鋼のの髪の毛が首や顎にあたって

くすぐったい。まさに本物の子猫のような仕草と子供特有の高い体温を感じながら私は執務室

に隣接する仮眠室の扉を器用に開けた。






















その後の子猫の行方は?